top of page

潜在意識に潜む不安の正体(デ・キリコ展)@東京都美術館/2024.4.28

更新日:2024年8月11日


Metafisical painting_Chiriko
赤い塔のあるイタリア広場

潜在意識は、意識の奥底にある複雑な心の領域であり、しばしばわたしたちの行動や感情に影響を与える。


キリコの「バラ色の塔のあるイタリア広場」というシンボリックな形而上絵画に見入ってしまう心は、己の潜在意識にある不安に気づき、自己と対話を開始する合図となる。


巨大で異様な赤い塔と周辺に点在する住居


この対比構造は支配関係を連想させる。大きさの違いとともに赤という警告の意味をもつ色のせいもあるだろう。どんよりとした空のもと、赤い塔の天井で揺らめく3つの旗もこの赤い塔の権威性を醸し出している。


支配関係を望む人はほとんどいない。しかし現実には、国家と市民、資本家と労働者、先輩と後輩、先生と生徒、親と子といった関係でこの支配関係が生まれてしまっている。


理性の力でこの人間に備わる本能的支配欲を制御する必要があるということだろう。


赤い塔を見た時の不安の正体は、この本能と理性の矛盾による人間社会の歪みを感じとった結果なのかもしれない。


影だけが存在する空虚な広場


左右の建物のアーケードに挟まれた地点から眺める中央の広場は、一見美しさを感じさせるが、何かの影がけが描かれている様は心の空虚感と漠とした不安を感じさせる。


人それぞれ空虚感と不安の要因は異なるものの、事象としての共通性はこの絵画が多くの人の心に響いている根拠となるものだろう。


光と影


太陽の光が遮られ、空は一面暗いのに広場と手間の建物には光が当り、影が広がっている。現実世界における太陽の光と地上の影の構造とは別物だ。


では光はどこからくるものだろう。


自分がコントロールできないこと(太陽の光)に頼るのではなく、自分の内から生まれる光の力で周囲を照らすこともできるということも暗示しているのかもしれない。

bottom of page