米国投資に役立つ米国経済指標はこうみる
- suddengleam
- 2024年4月29日
- 読了時間: 4分
更新日:2024年6月2日
米国の経済指標は、投資家や経済の動向に関心を持つ人々にとって重要な情報源です。これらの指標は、経済全体の健全性や将来の動向を理解するのに役立ちます。
ここでは、特に米国投資に関連する重要な経済指標をいくつか取り上げ、それぞれの指標の意味と影響について解説します。
政策金利(Federal Funds Rate)
発表機関
政策金利は、米国連邦準備制度理事会(FRB=Federal Reserve Board)が銀行同士の短期間の資金貸し借りの金利を決定するものです。雇用の最大化と物価の安定を目指しているFRBは政策金利を調整することで、景気の刺激や抑制を行います。
影響
政策金利の変動は金融市場全体に影響を与えます。金利が上昇すると、借入コストが上がり、消費や投資が抑制される可能性があります。一方で、金利が低下すると、経済活動が活発化する傾向があります。特にラッセル2000を構成する中小グロース銘柄に影響を与えます。
米国に本店を置く全企業の株式を対象とする株価指数であるウィルシャー5000(Wilshire 5000 Total Market Index)と政策金利の推移を表したのが下記グラフです。

政策金利が急低下するタイミングで株価も暴落していることが見て取れます。
これは景気後退の兆候を見て、FRBが金利を低下させて投資や消費の活性化を狙いつつも、景気の先行指標である株価が下落していることを表しています。
FRBでは、金融政策として金利を調整するなどの金融政策を通して物価の安定と雇用最大化を図ろうとしていますが、思い通りにならないこともしばしばです。
長短国債金利(Treasury Yield)
発行機関
国債は米国財務省(U.S. Department of the Treasury)が発行し、毎週の入札に基づき市場で金利が決まります。短期国債金利は米国政府が発行する1年以内の償還期限を持つ国債の利回りのことです。
長期と短期の国債の金利の差はタームスプレッドと呼ばれ、景気循環や金融市場の状況を予測する上で重要な指標です。
影響
通常、長期金利が短期金利を上回ると、景気後退の兆候と見なされ、逆イールドと呼ばれます。一方で、長期金利が短期金利を下回ると、景気拡張の兆候と見なされます(正イールドカーブ。
下記グラフのように2022年10月末からこの逆イールド状態が続いています。米国市場の過去30年間のデータに基づくと、逆イールドが解消されてから平均約1年7ヶ月後に株価が暴落しており、今後の景気後退と株価暴落が懸念されています。

失業率(Unemployment Rate)
発表機関
失業率は、労働力参加率と雇用者数を基に計算され、労働市場の健全性を示す重要な指標として米国労働統計局(BLS=U.S. Bureau of Labor Statistics)が発行します。
影響
失業率の上昇は景気の悪化を示し、消費活動や経済成長に悪影響を与える可能性があります。逆に、失業率の低下は経済の好転を示し、消費や投資の拡大につながることが期待されます。
歴史を遡ると、下記グラフのように失業率が急激に上昇し始めると、景気後退期に入り株価墓も大きく下落相場入りしていることが見て取れます。

PCE指数(Personal Consumption Expenditures Price Index=個人消費支出指数)
発表機関
PCE指数は、全米企業の販売データをもとにした消費支出に関連する物価変動を示す指標であり、FRBがインフレーションを評価する際の重要な要素として、米国商務省経済分析局 (BEA=U.S. Bureau of Economic Analysis)が月末に発行しています。
変動の激しい食品とエネルギーを除いた数字をコアPCEと呼びます。
影響
PCE指数の上昇はインフレーションの加速を示し、FRBが金融政策を引き締める可能性があります。一方で、PCE指数の低下はデフレーションの懸念を引き起こし、FRBが緩和的な政策を採る可能性があります。
PCEの他に消費動向を表す指数として米国労働統計局 (BLS=U.S. Bureau of Labor Statistics)が発表するCPI(Consumer Price Index=消費者物価指数)があります。
PCEが全米の販売データをもとにしているのに対して、CPIは都市部のみの家計調査に基づいており、PCEの方がFRBではより重視されています。
ISM製造業景気指数(ISM Manufacturing Purchasing Managers' Index)
発表機関
Institute for Supply Management(米供給マネジメント協会)が発表するISM製造業景気指数は、全米の製造業350社の購買担当役員に対するアンケート調査を実施し、その結果を基に作成する景況感を表す指数で、景気の先行指標として注目されています。
新規受注、生産、雇用、入荷遅延(配送時間)、在庫の5項目につき、「良くなっている(1)、同じ(0.5)、悪くなっている(0)」の三者択一の回答結果を点数化し、ウエイト付けした加重平均で算出されます。
50が好況と不況の分岐点を意味します。
影響
指数が50を上回る場合、製造業部門が拡大していることを示し、経済全体の成長に対するポジティブな兆候と見なされます。一方で、指数が50を下回る場合は景気の減速や停滞を示す可能性があります。
こちらが2018年から2024年3月までの推移です。

以上の様々な経済指標は、米国の経済状況を理解し、投資上の意思決定を補助するための重要なツールです。
ただし、単独で見るのではなく、複数の指標や他のファクターとの関連性を考慮することが重要です。また、経済指標の発表時期や市場への影響も考慮することが重要です。